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「インテリジェンス 闇の戦争」 ゴードン・トーマス

「インテリジェンス 闇の戦争」 ゴードン・トーマス著 を購入した。

早速、興味のある箇所をざっと読んでみたが、思ったとおりの面白さ。そして、根拠の薄い書き飛ばしっぷりだった。

例えば、P255、オサマ・ビン・ラディンがムジャヒデインとして、アフガニスタンでソ連軍と闘っているときの描写。

アフガニスタンでともに戦ったCIA工作員ですら、ビンラディンは通訳を通じて時折話をするだけの、よくわからない男だったという。

パキスタンでなくアフガンで、ビンラディンが戦闘を行っている際に、傍らにCIA工作員がいる、というのだ。

「聖戦ネットワーク」の著者、ピーター・バーゲンは、当時アフガンで働いていた元CIA工作員ミルト・ベアデンや、ヴィンス・カニストラーロの言葉を引いて、「この時代に、CIA工作員がアフガニスタン国内に入ったことはない」としている(同書P93~95)。

もちろん、他の本ではCIAはアフガン国内で活動していた、しかし主に資金をアフガンゲリラに手渡すためであり、戦闘に参加したなどと書いたノンフィクションは見当たらない。

つまり、この本「インテリジェンス 闇の戦争」は小説を読むように読めるし、むしろそう読むべく本だろう。

個人的には、CIAやMI6、MI5高官(といっても長官や副長官)の実名とその活動が細かく書かれており、読んでいてワクワクしたのは本当だ。このへんは、マニアにはうれしい。

このような本が売れてくれれば、もっと硬派なインテリジェンス本が翻訳される可能性も高まるかもしれないので、その意味では応援している。
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フランスの新情報機関

2008年7月、フランスに新しい情報機関が創設された。

国土保安局(DTS)と中央総合情報局(RG)が統合され、中央対内情報局(DCRI)に改編されたのだ。

管轄は内務省になる。

日本ではほとんど、情報がない。

私が知る限りの、詳しい記述は「情報史研究 第2号」の柏原竜一氏のものだが、それによると上記の合併に加え、海外の情報機関とのリエゾンをも含まれるという。

「*égoïstement vôtre*」というブログに乗っているルモンド紙の社説などを読むと、フランス政府のために国民を弾圧する秘密警察のように書かれている。国内治安に責任を持つ以上、国民の監視は対テロ活動の一環でもあろう。しかし、それが行き過ぎれば不満や批判がでるのも仕方ない。ましてや、政権の政治化に不都合なジャーナリストを監視しているなどは言語道断だ。

フランスでは、9.11以降大きなテロが起こっていない。

イギリスやスペインなどと比べると優秀な情報機関が存在するともいえるが、日本の研究者はもっとこういう情報を紹介してほしいものである。

まあ、需要がないのかな?

ジャーナリスト、ゴードン・トーマスについて

今日、本屋に寄ったらゴードン・トーマスの新刊「インテリジェンス闇の戦争 イギリス情報部が見た「世界の謀略」100年」という本が出ていた。

荷物になるので、残念ながら購入は後日にしたが、著者は最近の翻訳本「憂国のスパイ イスラエル諜報機関モサド」が有名なジャーナリスト。

しかし、その内容については、ちょっと首をかしげるところも多い。

先述の本でも、ダイアナ妃の死について、確認のしようもない極秘情報風の読み物として各国諜報機関の暗躍が合ったとしている。

もうひとつ、冷戦時代のヨハネパウロ二世の暗殺未遂について、ブルガリア情報機関にあやつられたトルコ過激派青年の仕業という定説を疑い、モサドの関与を記す。

なんか、面白すぎてイギリスの落合信彦か、と突っ込んでまうところが多い。

月刊FACTAに、(主にイギリスの)インテリジェンス関連情報を不定期に掲載してるが、やはりその信頼性は?が付く。もちろん、インテリジェンス関連の情報を確認できることは少ないのだが、それでも毎回毎回どこから仕入れてくるのか、と言うほど極秘情報が載っている。

まあ、自分自身には「情報の信頼性」は命に関わることではないので、怪しいと思いながら楽しんで読んでいる。

世界のインテリジェンスに関するジャーナリストは、「現役のスパイは情報源になりえない」というのが常識のようなので、ボブ・ウッドワードやセイモア・ハーシュ、英国人ではブライアン・フリーマントルなどの著書と比べてみるのも面白いだろう。

MI-6の公式史

MI-6の公式が刊行されるという報道がありました。

しかし、以前、情報史の大家、クリストファー・アンドリュー氏が著した「MI-5の歴史」(タイトルは、Defend the Realm: The Authorized History of MI5)は公式史ではなく、公認の歴史だと、ブログ「イギリス情報部の歴史」に書かれています。

今回MI-6史の正確には公認史なのでしょうが、それより残念なのは、1949年までの記述しかないことです。
当然のことながら、冷戦時代の終わる90年代に活動した人々は現在でも活動を継続していたり、あるいは利害関係を保持したりしているでしょう。なので、書けないことが多いのもわかります。

しかし、49年までというのは少し中途半端な気がします。
多くのジャーナリストや研究家や時には当事者が、実名でマラヤ紛争、アフリカでの多くの戦争、フォークランド紛争やアイルランド紛争、また21世紀のアフガン戦争やイラク戦争について、記事を書き、経験を暴露し、意見を発表しています。
それについて、政府の情報機関がどう関わったか、知りたいのは人情でしょう。
それらは、50年後に持ち越しなのでしょうか?



http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20100922-OYT1T00470.htm

「007」実在モデル暴露?MI6の公式本刊行


刊行されたMI6の正史を掲げる著者のキース・ジェフリー教授=ロイター 【ロンドン支局】スパイ映画「007」で知られる英対外情報部(MI6)の歴史を公式にまとめた本が21日、刊行された。

 存在すら不明だった組織の正史出版は初めて。1909年の創設から、冷戦が顕著になった49年までのスパイ活動を詳述し、英国の有名作家で、「月と六ペンス」で知られるサマセット・モーム(1874~1965)、「第三の男」を書いたグレアム・グリーン(1904~1991)らが所属したことも確認された。AFP通信などが報じた。

 また、「007」シリーズの主人公ジェームズ・ボンドには実在のモデルもおり、原作者イアン・フレミングの親友で、ボンド同様に「美女と速い車が好きだったスパイ」だという。

(2010年9月22日13時24分 読売新聞)

トルキ長官辞任の謎

前回の記事で書いたとおり、サウジ情報機関について調べている。

その中で、大きな「謎」は、元長官のトルキ王子が情報機関長官を辞任した理由である。

2001年9月11日、アメリカ同時多発テロの1週間前、突然辞任した。

言い方を変えれば、辞任した1週間後にあのテロが起こったのだ。

関係が無いと考える方がおかしい。

が、これまで決定的な理由はわかっていないし、共通の見解もまだないようである。

「ポスト・タリバン」(中公新書クラレ 遠藤義男、藤原和彦、柴田和重)によれば、「ビンラディンのアフガンからの退去がうまくいかなかったからだ」という。

「サウジアラビア 中東に鍵を握る王国」(集英社新書 アントワーヌ・バスブース)によれば、CIAと癒着しすぎていることを理由に解任された、としている。

どちらも、タイミングについては言及していない。

私の推測は同人誌に書くつもりだが、同王子は辞任後、駐英大使、駐米大使を歴任し、現在でもアブドラ国王に近いとされる。

ビンラディンとのつながりもあり、まさにキーパーソンのひとりといっても過言ではないだろう。

情報機関長官は、短期間ナイフ王子が勤めた後、現在のムクリン王子が就任、トルキ時代とは違いもみられ、外交にも関与している。




サウジ情報機関の暗躍

18日、サウジ情報機関「王国総合情報庁」に関する報道を見つけた。

http://www.47news.jp/CN/200301/CN2003011801000400.html

イラク転覆計画を否定 サウジ情報機関トップ
 【カイロ18日共同】18日付のサウジアラビア紙オカズによると、同国情報機関トップのナワフ王子は同紙に対し、米誌タイムが報じたサウジによるイラクのフセイン体制転覆計画を全面的に否定した。  タイム誌は16日、米軍のイラク攻撃を回避するため、国連安全保障理事会が恩赦を与えることを条件に、同国軍幹部らにフセイン体制を転覆させる計画をサウジが立案していると報じた。  王子は「全く根拠のない話。サウジはイラクの内政に干渉できないし、イラク(軍幹部)とは国内外で一切接触していない」と反論。一方で「サウジはイラク政権と考えが一致していないが、イラク国民の望みがかなうよう願っている」とも述べ、フセイン政権とは距離を置く姿勢を強調した。

実は、ここ一年、サウジアラビアの情報機関について調べている。同人誌を作ろうと思っているからだ。が、なかなか思うように進まない。

それは置いといて、この報道について思うことをひとつ。

アメリカのCIAではあるまいし、いちいち報道機関のあいまいな記事(この場合は米紙タイムズ)に、コメントをするのは、過剰反応ではないのか、とも思うが、実はこれは、現在の長官ムクリン王子の考え方の表れではないかと思う。

それは「サウジアラビア王国総合情報庁」は、公式な機関であり、その活動はサウジ王家の繁栄と存続ため、正々堂々と活動している、というアピールなのだ。

もちろん、秘密工作の部門は在るだろう。しかし、かつて9.11へ至るの時代の、トゥルキ王子の時代の機関とは違う「先進国並みの情報機関」であろうということ。

ムクリン王子は、たびたびマスコミに登場し、その動静が報道される。

それは、自らの正当性の証であり、マスコミをあやつるメディア戦略の一環なのだと私は思う。

うまくいけば、今冬には同人誌「サウジアラビアの情報機関」が完成する。乞うご期待。

イスラム革命防衛隊

宮田律「イラン 世界の火薬庫」の第2章は「イラン革命防衛隊」というタイトルである。

しかし、イランの当該組織は正式に「パースダラーネ・エンゲラーベ・エスラーミー」「イスラム革命防衛隊」だと思う。

陸海空3軍の他に、特殊部隊「クドスフォース」や独自の情報機関「エダーレエ・ヘフザート・ヴァ・エッテラート」を持ち、中国人民解放軍のように傘下に多くの企業を抱える。

2005年アフマディネジャド大統領が誕生してから、そのウェイトは増すばかり。

2008年には民兵組織「バシージ」を指揮下に統合。また同年に、州ごとの分権組織に再編成された。

2009年には、バシージ司令官ホセイン・タエブ氏が革命防衛隊の情報機関 エダーレエ・ヘフザート・ヴァ・エッテラート の長官となった。

また特殊部隊 クドスフォース の司令官、カセム・スレイマニ准将の記事がニューズウィーク日本版2010年3月17日号に載っており、そこでは「イラクの運命を握る陰の総督」のタイトルで、イランの最高指導者ハメネイ師が、革命防衛隊とクドスフォースを内政外交両面で頼りにしている、としている。

実際、イスラム革命防衛隊はイラン情勢を見る上でも、中東情勢にも欠かせない重要なプレイヤーであることは間違いない。

トルコ情報機関 MITの新長官

日本ではあまり知られていない情報機関に、MIT(トルコ国家情報機構)がある。

日本でその名が取りざたされたのは、1999年、アブドラー・オジャランクルド労働党議長が逮捕されたときかもしれない。ナイロビに潜伏していたオジャラン氏を、CIA,モサド、MITの共同作戦で身柄確保し、トルコ軍特殊部隊に引き渡されトルコに移送した。同氏はその後の裁判で終身刑を言い渡された。

私がMITの名前をはじめて知ったのは(現物が手元に無いので、うろ覚えだが)デイビッド・イグネイシアスの小説「神々の最後の聖戦」だったような気がする。

トルコは、日本ではEU加盟問題ク、ルド人問題などで知る人も多いだろうが、われわれの想像以上に中東地域では重要性を持っている。


今年5月、MITに新しい長官が就任したことにイスラエルが懸念を示したと言うニュースがある。
日本では「中東の窓」というブログでしか見られないようだが、英語で検索すると多くのニュースがヒットする。

かいつまんで言うと、MIT新長官にカハン・ヒダン氏が就任したが、イスラエルは同氏が親イラン心情の持ち主で、イスラエルの提供した秘密情報がイランへ流出するのではないかとバラクイスラエル国防相が懸念を表明したのだ。

イスラエルの情報機関、モサドはアラブ諸国の情報機関と一定の友好関係を保っている。有名なのはヨルダン情報機関GIDだが、エジプトのムハバラト、かつてのイラン秘密警察SAVAK、モロッコの情報機関などと協力関係を持っていた。
その中にはトルコのMITも入っていたようであり、ある程度の情報共有がなされていたからこそ、今回の懸念表明となったのだろう。

日本イスラム連盟のHPコラムによれば、クルド労働党(PKK)という非合法クルド人組織とMITがコンタクトを取っている、つまりクルド問題の平和的解決の道を模索している、という。

MITは、トルコ国内の政治手段として決して軽んじら得ないウエイトを占めている。
今後も、日本で各国情報機関の公式な人事などは報道されるべきだと個人的には思う。




死の商人 ビクトル・ボウトについて

ニューズウィーク日本版オフィシャルHPに、ビクトル・ボウトについての記事が載っていた。

元KGBで、ソ連崩壊後、兵器商人として大きく手を広げていったという。

イメージとしての「死の商人」にピッタリするキャラクターだが、ニューズウィークの記事では、2008年にタイで逮捕されたボウトが、アメリカに引き渡されるのを、ロシアが妨害しているのは、KGB時代モザンビークでセチン現ロシア副首相の指揮下で働き、その後もロシアの利益のために活動してきたからだという。

しかし、「ワールドインテリジェンス 6号」によれば、ボウトはイラク戦争の戦時下、戦後、ハリバートン社のために人員や物資を運び、例のCIA秘密収容所にも関与していたと言う。

日本で、ボウト(ブートの表記もある。 Bout)に関する資料は少なく、私の知っているのは前述のワールドインテリジェンス6号の「現代武器商人の実像 菅原出」、SAPIO 2005年6/22号、同2003年2/22号など、単行本「テロ・マネー ダグラス・ファラー 日本経済新聞社」くらいである。ダグラス・ファラーは「Merchant of Death: Money, Guns, Planes, and the Man Who Makes War Possible 」というボウトに関する本も書いている。

ちなみに、前述の「ワールドインテリジェンス 6号」当該記事によれば、ボウト以外に有名な武器商人は、ベルナール・ラスノー、レオニード・ミニン、モンゼール・アル・カサール、サルキス・ソガナリアンなどの名前を挙げている。

このうち、アルカサールは2007年にスペインで逮捕されており、その後アメリカに移送され有罪判決を受けた。今回のボウトも、同じ経過をたどる可能性が高い。

情報機関員の出向

一昨日の記事、「MI6情報員、死体で発見」。

日本では、あまり後追い記事は無いようだ。

週刊新潮に記事が載ったらしいが見ていない。

が、ニューズウィーク日本版オフィシャルサイトに、1P程度の記事があった。

それによると、ガレス・ウィリアムズは数学の天才で、自転車レースに熱心だったということ、公式にはいまだに死因が特定されないことがわかる。

まあ、興味が引かれるのは、GCHQ(英国政府通信本部)から1年前にMI6に出向していたことだ。

おそらく、シギント(シグナルインテリジェンス)に関する技術提供と、MI6との情報授受が目的だと思うが、もちろん推測でしかない。

情報機関員が、他の機関に出向することは、なんとなく知ってはいたが、実例を多くは知らない。

有名なのは、CIAとFBIだろう。具体的には、1990年代後半、FBIニューヨーク支局の対外諜報担当官、ダニエル・コールマン捜査官が、CIAの対テロセンターに出向していたことだろう。オサマ・ビン・ラディン追跡を行い、しかも周知のように成果は実らなかった。

日本では、内閣情報調査室は、室員にはじめから専任者と出向者がいるという。

なにしろ、歴代の内閣情報室長(現在は内閣情報官)は、ほぼすべてが警察出身者で、専任者は一人もいないのだ。

CIAだって、長官は外部から来る、というがあれは閣僚級だから。しかしそれでも、生え抜きの長官が何人かいる。




MI6情報員、死体で発見

イギリスの秘密情報機関、MI6の情報員が死体で発見された。

現在の同機関の最重要ターゲットは、イスラム過激派テロ組織「アルカイダ」とその関連組織と推測している(私が個人的に)。

さまざまな報道を総合すると、特に作戦中の戦死では無いようである。

個人的な性的趣向(同性愛やSM)のトラブルとの見方もあり、今後の警察の捜査が待たれる。

まあ、「真相と称する告白や暴露本」は出るかもしれないが、本当の真実は、他の多くの事柄と同じく闇の中に鳴るんじゃないかなあ。



下記はロイター電のコピペ。

[ロンドン 25日 ロイター] 行方不明となっていた英情報局秘密情報部(MI6)の諜報員とみられる男性が23日、ロンドンのアパートで殺害されているのが見つかった。メディアが25日報じた。

 報道によると、遺体で見つかったのはギャレス・ウィリアムズ氏で、年齢は30代とされる。行方不明になったとの届け出を受けて警察が捜索を行ったところ、マンションの一室で死んでいるのが発見されたという。死体解剖は25日に行われた。

 複数メディアの報道によると、ウィリアムズ氏は海外で諜報活動を行うMI6に所属していた。今回の事件は殺人など重大犯罪を扱う部署が捜査を担当していることから、警察は死亡がテロ行為や諜報活動には無関係と判断しているとみられる。

 一方で英外務省の広報担当者は、今回の事件は警察が処理しているとした上で、一個人が情報機関に所属していたかについてはコメントできないと述べた。
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